- 経済成長が金利リスクを高める
- 市場価格の乖離
- 金への需要
米経済の力強い成長が金利リスクに
このところ原油価格が市場全体を左右する大きな要因となっていますが、こうした傾向は中東情勢が安定するまで続く見込みです。一方で、人工知能(AI)も引き続き重要な要因となっています。金利上昇は通常、ハイテク株や小型株にとってマイナス要因となります。実際に、米国の代表的な小型株で構成されるラッセル2000指数は、9月に入って他の指数に比べて出遅れています。それでも、ハイテク株は好調な企業業績見通しが金利上昇の悪影響を相殺し、堅調な動きが続いています。
ただし、米国債の利回り(そして間接的には世界の利回り)には、新たなリスクが生じています。購買担当者景気指数(PMI)が示すように、米国の経済活動が再び加速していることは、インフレ率が依然として米連邦準備制度理事会(FRB)の目標である2%を上回る中で、トレンドを上回る経済成長が継続していることを示唆しています。たとえ原油価格が下落したとしても、経済が過熱するリスクが高まっているため、債券利回りが高止まりするというリスクが出てきています。比較的高い成長率とインフレ率は、株式相場にとって追い風となるため、株式市場は最初こうした経済環境を歓迎するしれません。しかし、米政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利に対する市場予想がさらに高くなれば、相場の調整はより厳しいものになることも想定されます。
市場による価格の誤評価か
米国債は売り圧力にさらされており、9月には長期債利回りが数十年ぶりの高水準を記録しました。これは地政学的な不安定性に加えて、エネルギー価格の高騰、インフレ見通し、巨額の政府債務、および金融引き締め政策といった要因が複合的に作用した結果であり、これらすべてが、タームプレミアム(長期債における追加の上乗せ金利)の上昇につながっていると考えられます。利回りに左右されない買い手(中央銀行、外貨準備管理者など)が減少する中で、投資家は長期資産を保有する際、より高い利回りを求めるようになっています。こうした流れは、規制や法制度の変更(オランダの年金基金改革、ドイツの債務ブレーキの見直し)や、いわゆるハイパースケーラーによる社債の大量発行に伴う競争の激化によって、さらに加速しているようです。
欧州や英国では、市場価格と経済実態との間に明らかな乖離が見られます。現在の市場による政策金利の期待値は、特に供給ショックへの反応において、過度に強気であると思われます。この乖離の大部分は、経済を安定させる理論上の金利である「中立金利」に起因しています。市場は、人工知能(AI)による生産性の向上(そして、それに伴う将来的な中立金利の上昇)を織り込んでいるようですが、中央銀行側は慎重な姿勢を維持しています。また、中央銀行は一貫してデータ依存のアプローチを強調しているため、現在の市場価格は行き過ぎている可能性があります。こうした過剰な期待は、中央銀行のアプローチにより密接に沿う形で調整されると考えられ、結果として長期債券利回りのボラティリティを低下させると見ています。
金 ― 利上げ後の視点
好調な米国経済と債券利回りの上昇に直面する中、金価格は底堅く推移しています。これは金利が重要ではなくなったということではなく、貴金属に対する投資家の需要の高まりを市場がより重視していることを示唆していると思われます。米FRBが再び利上げに踏み切れば、金価格は調整局面に入る可能性が高いものの、その影響は限定的となりそうです。季節的な需要の増加に加え、中央銀行やその他の公的機関による買い入れが継続していることから、中期的には金のリスク・リターンのバランスは上昇の可能性に傾いていると見ています。
外貨準備管理者は、戦略的なポジション構築を目指し、価格の下落時や安定時に買い増しを続けています。とりわけ、中国は8月にさらに20トンを追加し、今年の累計購入量は80トンに達しました。また、金の上場投資信託(ETF)においても、年初に記録した高値に向けてポジションの再構築が進んでいます。
投資家は、目先の経済指標の発表や、利回りを生む資産ではなく金を保有することによる潜在的な機会損失(インカム収入の喪失)を超えた視点を持つようになっています。市場の関心は、マクロ経済、政策、および地政学的リスクが混在する状況において、ポートフォリオの耐性を高めるための手段としての、中長期的な金の役割へと移行しているものと思われます。
投資アイデア – 柔軟性のあるユーロクレジット投資戦略
ユーロ建てクレジット市場は、地政学的緊張やエネルギー価格の高騰にもかかわらず、強固なファンダメンタルズと堅調な企業業績に支えられ、底堅く推移しています。社債のリスクプレミアムは依然として低い水準にあるものの、金利上昇などの市場動向が支援材料となり、絶対利回りの上昇と良好なインカム収入をもたらしています。また、市場がすでに欧州中央銀行(ECB)による追加利上げ見通しを織り込んでいることを踏まえると、戦術的なデュレーション調整が有益となると見ています。機敏かつ柔軟なアプローチをとることで、ハイイールド債や劣後債を含むユーロ建てクレジットの幅広い領域における投資機会を活用することができるでしょう。セクターや信用格付けに応じたアクティブな配分と厳選した銘柄選択が、潜在的なリターンを生み出すための主要な手段であることに変わりはありません。
投資アイデア – インフレおよび金利変動への備え
地政学的緊張により、特にエネルギー価格の変動からインフレの不確実性が高い水準で続いており、金融情勢は引き続き引き締め的な状態にあります。各中央銀行が明確にタカ派的な姿勢に転じたことで、短期的な成長ポテンシャルとインフレリスクを考慮すると、短期のインフレ連動債にとって好ましい投資環境と思われます。すでに複数回の利上げが市場価格に織り込まれていることから、インフレ連動(元本がインフレに連動する特徴)と、債券を保有することで得られる潜在的なリターンの両面において、年末にかけて良好な投資機会が生み出されることが期待されます。短期戦略(ショート・デュレーション戦略)は、全期間戦略に比べて金利感応度が低いため、インフレ上昇のリスクに対するヘッジとして有効であると考えられます。
投資アイデア – AI開発を可能にする環境ソリューション
人工知能(AI)革命は、半導体や技術への投資だけにとどまりません。AIの急速な成長には、特に電力や水道といった、AIの実現に不可欠なインフラの大幅な拡充が伴います。データセンター需要の高まりにつれて、発電量の増加、より強固でスマートな送電網、変圧器、蓄電池、エネルギー効率の高い冷却システム、そして信頼性の高い水道インフラなどが必要になります。この高まる需要に応えつつ、低炭素電力システムへの移行を支援するためには、環境ソリューションへの多額の投資が必要となるでしょう。AIの継続的な拡大を可能にするソリューション・プロバイダーに対して、広範かつ複数年にわたる潜在的な投資機会が生まれると見ています。
資産クラス別概要
表明された見解は、資産クラスのリターンおよびリスクに関する BNPP AMの予想を反映しています。各色は長期的に観測される動向と比較した今後3~6か月のリターンの見通しを示しています。
当市場見通しは、BNPP AMの予想を示したものであり、資産配分を含む投資に関する推奨や助言を意図したものではありません。
| 株式 | ||
| 米国債 | 米連邦準備制度理事会(FRB)は政策金利を3.75%~4.00%に引き上げ、タカ派的な姿勢を打ち出した。市場では現在、政策金利が4.50%~4.75%前後でピークに達すると見込む | |
| ユーロ – 中核国 | 欧州中央銀行(ECB)による最近のタカ派的な発言を受け、市場では政策金利が現在の2.50%から3.25%~3.5%に引き上げられるとの見方だが、当社はそこまでの利上げは必要ないと見ている。バリュエーションは良好だが、市場センチメントは良くない | |
| ユーロ –国債スプレッド | フランスおよびイタリア国債のリスクプレミアムが上昇。フランス国債は、短期的には2027年度予算案の審議結果、中期的には大統領選挙の結果に左右されると見る | |
| 英国債 | 行き過ぎたインフレと財政懸念から、低迷が続く。イングランド銀行による国債売却の終了は、長期の英国債に対して多少の安堵感をもたらす可能性 | |
| 日本国債 | 日本銀行は利上げ路線を歩んでおり、おおむね市場の予想通りの動き | |
| インフレ連動債 | インフレ率のブレークイーブン・スプレッドは、短期的に原油上昇に伴い拡大したが、長期のブレークイーブン・スプレッドは引き続きECBやFRBの目標値に近い水準で、良好な水準と言えるだろう。インフレ率上昇のリスクに対する防衛策として、ショートデュレーション戦略が引き続き有効と見る | |
| 新興国ハードカレンシー | 利回りは引き続き良好な水準だが、マクロ経済リスクは依然として大きく、銘柄選びが重要 | |
| 新興国現地通貨 | エネルギー価格の先行きが依然として不透明なため、利下げは当面保留か |
| 株式 | ||
| 米ドル投資適格債 | スプレッドはイラン危機以前の水準を上回っているが、堅調な経済によりファンダメンタルズは良好。今後、ハイパースケーラーからの大規模な供給が見込まれるため、テクニカル面では弱含み | |
| ユーロ投資適格債 | 利回りへの需要がテクニカル面で後押し。ファンダメンタルズは非常に良好で、格下げよりも格上げが多数。ただしリスクプレミアムは極めて低い水準で推移し、さらに低下する可能性は低いと見る | |
| 英ポンド投資適格債 | 長期投資家にとって良好な利回り。英国債が引き続きボラティリティを高める要因だが、イングランド銀行による国債売却の終了が短期的な安堵感をもたらす可能性 | |
| 米ドルハイイールド | 全体としてファンダメンタルズは改善しているが、政策金利の引き上げにより一部のセクターに圧力がかかる可能性も | |
| ユーロハイイールド | 利回りが約6.75%と引き続き良好な水準だが、リスクプレミアムは低水準にとどまり、新規発行は増加傾向にある。銘柄間の格差が広がっているため、銘柄選択がカギ |
| 株式 | ||
| 米国 | テクノロジーとAIが引き続きリターンを牽引する一方、製造業の回復が広範囲に及び、米国の経済活動は好調を維持。ただし、インフレや金利上昇見通しが、依然としてリスク要因 | |
| 欧州 | 業績トレンドが強まっていること、欧州株へのポジション構築が限定的であることが追い風も、エネルギー価格の上昇、金融引き締め、地政学リスクとの近接性が良好な状況を相殺。欧州地域では銀行株を選好している | |
| 日本 | 企業のファンダメンタルズは引き続き堅調だが、バリュエーションが再評価され、市場はポジション調整主導のリスク回避局面に。日銀の政策や円相場の不透明感も、方向感に欠ける要因に。銀行株が良好な位置づけと見る | |
| 中国 | 政府の政策支援や良好なバリュエーションにより、下落リスクは抑制されつつあるが、消費動向は依然として低調で、企業業績の持続的な回復への見通しは不透明 | |
| 新興国市場 | 将来的な利益見通しを基準とした場合、株価評価(バリュエーション)は良好と見る | |
| セクター | エネルギー関連株への選好は、コモディティに対するポジティブな見方を反映 | |
| 投資テーマ* | AI ハードウェア、スマートグリッド、炭素移行戦略が長期的に有望 |
* BNPP AMでは、企業が活用している6つのメガトレンドを特定しました。これらは、進化する世界経済を乗り切って行くのに最適な位置にあると考えるものです:自動化とデジタル化、消費者の傾向と長寿化、エネルギー転換、生物多様性、自然資本
出所:BNPパリバ・アセットマネジメント、2026年9月末現在