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オープンエンド型ファンドにおけるプライベート・アセットへの資産配分について

BNPパリバ・アセットマネジメントは最近のリサーチ(※グローバルサイトへリンク)において、オープンエンド型ファンドでのプライベート・アセットへの投資は、投資家に分散効果などのメリットをもたらす一方で、流動性の面などで課題があることを解説しています。今回の記事では、資産運用会社がオープンエンド型ファンドでプライベート・アセットへの資産配分を組み入れたポートフォリオを構築し、相対的に小口の投資家に対してどのように投資機会を提供するべきか考察していきます。

オープンエンド型ファンドがプライベート・アセットに投資する場合、主に次の3つの課題があります。

  • キャッシュ(現金)比率を最小限に抑えてリターンが希薄化されるのを回避するためには、プライベート・アセット投資のキャピタルコールと分配金を厳密に管理し、投下資本が効率的に運用される必要がある。
  • ファンドマネジャーは、リバランスが困難な流動性の低いプライベート・アセットへの資産配分が過度に高まらないように、ポートフォリオのアロケーションが大きく変動しないよう管理する必要がある。
  • 投資戦略は、オープンエンド型ファンドに期待される流動性要件(設定解約を含む)を提供する一方で、数年間ロックアップされるプライベート・アセットに資本を投入できるように設計される必要がある。 

以下では、これらの課題を解決する戦略をご提案いたします。

キャッシュフローの金額とタイミングがリターンに影響を与える理由

プライベート・アセットのパフォーマンス指標として用いられているのは内部収益率(IRR)です。IRRは、プライベート・エクイティ・ファンドやプライベート・デット・ファンドのキャッシュフロー(キャピタルコールと分配金)の金額とタイミング、そして計算時点の純資産価値を考慮したパフォーマンスを反映したものです。

当社のリサーチが示している通り、プライベート・アセット・ファンドのIRRは魅力的で、同等の上場資産ベンチマークのリターンよりも高い傾向があります。

しかし、IRRと上場資産のリターンを直接比較することはできません。それは、IRRの計算において投資家が初期段階に投資した資本は、最初のイグジット(投資回収)で計算されたIRRと同じIRRでプライベート・アセット・ファンドの存続期間にわたって再投資されるという仮定が組み込まれているからです。

残念ながら、プライベート・アセット・ファンドにコミットされた資本は、すべてが同時に投資されるわけではなく、ファンドの信託期間全体にわたって投資されるというわけでもありません。投資されていないキャッシュはリターンを希薄化させるため、コミットされた総資本に対する実質的なリターンに影響を与えるケースがあるのです。

オープンエンド型ファンドによるプライベート・アセットへの投資

こうしたリターンの希薄化を避けるためには、プライベート・アセットのキャッシュフローを適切に管理し、投資に回されないキャッシュを最小限に抑えることが極めて重要となります。

プライベート・アセット・ファンドからの分配とキャピタルコールを完全に一致させることは不可能であるため、キャッシュフローを効率的に管理するためのバッファーとして、上場株式と債券への配分が必要となります。

当社が提案する戦略では、キャッシュへの配分を最小限に抑える一方で、新たな投資資金は毎年最新ビンテージ(組成年)のプライベート・アセット・ファンドに投資されるというものです。この方法を用いると、ファンドはプライベート・エクイティとプライベート・デットの複数のビンテージに永続的に投資されていることになります。この戦略は事実上、IRRに組み込まれている再投資の仮定を実践していることになります。

また、オープンエンド型ファンドとして許容されるレベルの流動性(例えば、投資家が2週間に1回ファンドを購入または解約できる)を提供できるようにするためには、ポートフォリオは非上場資産と上場資産をバランスよく保有し、上場資産にもある程度の資本配分を行うことで、短期的な資金流出入に対応できるようにしなければなりません。

ダイナミック・リコミットメント戦略(Dynamic recommitment strategy)

ダイナミック・リコミットメント戦略では、ポートフォリオにおけるプライベート・アセット・ファンドの様々なビンテージから想定されるキャピタルコールと分配金、そして各ファンドの期待IRRと上場資産の期待リターンを使用します。


プライベート・エクイティを例にとってみましょう。プライベート・エクイティにおおよそ一定の配分比率を維持することを目標とした場合について、年あたりで必要とされる追加コミットメントの規模を計算します。プライベート・エクイティ・ファンドへの目標配分比率は、ポートフォリオの7.5%に維持するとの前提を置きます。

エクイティ・ファンドへの目標配分比率は、ポートフォリオの7.5%に維持するとの前提を置きます。

この戦略では、キャピタルコール、分配金、期待リターンの仮定を用いて、ポートフォリオの長期間にわたる計量シミュレーションから、その規模を導きます。結論としては、新しいビンテージにコミットメントされる投資資金の金額は、毎年ポートフォリオの1.92%相当と試算されました。

この1.92%の投資資金うち、

  • およそ0.42%は、最新ビンテージ(新しくコミットしたプライベート・エクイティ・ファンド)の最初のキャピタルコールに投資されます。
  • 残り1.50%は、上場株式に投資され、将来のキャピタルコールに対応するためのバッファーとして保持します。

このシミュレーションでは、以下の点を考慮しています。

  • 毎年最新ビンテージへコミットメント
  • ポートフォリオに含まれるさまざまな資産が、時間の経過とともにどのように蓄積されていくか
  • あるビンテージにコミットした各サブ・ポートフォリオ内の投資が、時間の経過とともにどのように蓄積されるか
  • 想定されるキャピタルコールと分配金に基づき、各サブ・ポートフォリオ内の非上場資産に投資されている資金の資産配分が時間の経過とともにどのように変化するか

いずれの時点においても、過去12年間毎年新しいビンテージに1つずつ投資し、計12個のサブ・ポートフォリオがあるという前提です。


シンプルではありますが、この戦略によって、プライベート・アセット・ファンドのIRRがポートフォリオ全体のリターンに寄与することを可能にし、プライベート・アセットのリターンの希薄化を回避します。

すべてのプライベート・エクイティ・ファンドまたはすべてのプライベート・デット・ファンドにおいて、キャピタルコールと分配のタイミングが完全に同じなわけではなく、実現IRRも同じではないという事実に臨機応変に適応しなければならないため、実際のポートフォリオでこの戦略を採用した場合はより複雑になると言わざるを得ません。また、それぞれの資産における実現リターンも、期待リターンとは違ったものになるでしょう。

それでも、実際のポートフォリオにおける戦略の設計や運用において、この原則を適用することができます。

高ストレス状況への対応

オープンエンド型ファンドにおいて、投資資金が数年間ロックアップされている間にプライベート・アセットへの資産配分を管理するのは容易ではなく、能力を問われるものです。ここでは、2つのストレスシナリオを見てみましょう。

株式市場が暴落した場合の影響:ファンド内の他の資産クラスのパフォーマンス低下が理由でプライベート・アセットへのアロケーション比率が上昇した場合、プライベート・アセットへの資産配分を目標値に戻す最もコストがかからない方法は、新ビンテージへの年間コミットメントを、必要であればゼロまで、必要な期間だけ減らすことです。

解約対応の影響:オープンエンド型ファンドの流動性要件を満たすという課題は、上場株式や上場債券を利用して目先の流動性ニーズを管理することで対処できます。つまり、ファンドの購入や解約が発生した場合、新しいプライベート・アセットへのコミットメントを変更し、従来のプライベート・アセットへの戦略的資産配分に戻すまで、上場株式や上場債券の売買にて対応していきます。

ファンドの流動性を管理しなければいけないことが、プライベート・アセットへの資産配分を最大化させ、上場株式・上場債券への資産配分を最小化するという目的にとっては、制約となります。

プライベート・アセットの成長可能性

リターン向上とリスク抑制の可能性、そしてサステナブル投資においてプライベート・アセットが果たし得る役割を勘案すると、プライベート・アセットへの投資は今後も拡大することが予想されます。

私たちは、資産運用会社がオープンエンド型ファンドにおいて、プライベート・アセットへのアロケーションを組み入れたポートフォリオを構築することは可能であり、小口の投資家であってもこの魅力的な資産クラスへの投資が可能になると考えています。

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