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サステナビリティへの移行において、農業が重要視される理由

農業は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)のいくつか、とりわけ飢餓ゼロ、陸と海の豊かさ、すべての人の健康、つくる責任などの目標と深く関連しています。世界中で淡水供給の70%以上が農業に使用されており、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によると、農業関連セクターは世界の温室効果ガス排出量の22%を占めています。私たちが行動を起こさなければ、地球温暖化を1.5°C以内に抑えることは不可能であり、生物多様性の喪失は続くことになります。

「アースデイ2023」に際して、私たちは環境再生型農業について詳しく見ていきたいと思います。まず、環境再生型農業においては、収穫量を目的とする工業型農業とは異なり、普遍的な定義がないことを理解する必要があります。環境再生型農業は持続可能性(サステナビリティ)、とりわけ以下に焦点を当てています。

  • 表層土壌の健康と再生
  • 生物多様性
  • 水循環の改善
  • 生物学的炭素隔離(植物が光合成によりCO2を吸収すること)
  • 気候変動に対する耐性

環境再生型農業の利点とは?

農家にはさまざまな栽培方法があります。たとえば、有機農業における不耕起栽培あるいは保全耕起は、土壌中の炭素が空気にさらされた際、CO2排出の原因となる土壌呼吸を最小限に抑えることができます。

また、健全な土壌マイクロバイオーム(土壌中の微生物の集団)の生息にも寄与します。これにより、主に亜酸化窒素の形で温室効果ガス(GHG)の排出につながる化学肥料を使用する必要がなくなります。この方法は、水の蒸発を遅らせ、灌漑効率を改善しながら、水を吸収してろ過する土壌の能力を高めます。その結果、多くの場合において、より栄養価の高い、より自然な食品が育ちます。

カバークロップ(被覆作物)は有機農業の不耕起栽培における重要な手法で、土地が生育期間中に裸地にされた場合に発生する土壌侵食や栄養不足から保護することにより、土壌を健康に保全することに寄与します。カバークロップは、雑草の成長や病気、害虫を防ぎ、栄養素を高める一方、殺虫剤や殺菌剤、除草剤の必要性を減らし、生物多様性と炭素隔離の改善につながります。

アグロフォレストリー(森林農業)は樹木を植栽し、その根が地下深くまで伸びることで、炭素を土壌内に放出します。樹木は養分を循環させて土壌と結びつけ、土壌侵食を防ぎます。アグロフォレストリーには、主に次の2つのタイプがあります。

  • 「シルボ・アラブル(Silvo-arable)」と呼ばれるアグロフォレストリーは、農作物が樹木の下で栽培されるもので、植物が地上と地下のそれぞれの栄養素で育つことになります。
  • 林業と畜産業を組み合わせた「シルボ・パストラル(Silvo-pastoral)」と呼ばれるアグロフォレストリーは、家畜を樹木の下に放牧し、家畜に日陰と低木や木の葉を与える一方で、樹木と土壌は動物の排泄物に含まれる栄養素の恩恵を受けることができます。

カバークロップもアグロフォレストリーも、いずれも地域の気温を低く保つことに寄与します。
最終的に、農業のこれら栽培方法や、堆肥化、輪作、家畜の輪番放牧などの方法によって、より効率的な資源利用が可能になります。たとえば、より効率的な栄養素の使用により作物の収穫量を増やしたり、より効率的な水の使用によって淡水供給のストレス軽減にもつながります。

環境再生型農業の実践によって収穫量がより増加する場合、より多くの自然生息地が農地として開墾されずに保護することができるため、農業セクターの環境フットプリントの削減につながります。

農業従事者にとっては、人工投入コストの削減、場合によっては作物の収穫量と品質の向上、極端な気候変動による影響や市場変動に対する耐性の向上など、長期にわたり経済的利益がもたらされる可能性があります。農業従事者は、二酸化炭素の回収や土壌への貯留を通じた収益など、環境に配慮した新たな収入源を獲得することも可能です。

より機能させるために

世界経済フォーラム(WEF)によると、環境再生型農業の栽培方法が世界の耕作地の40%で実施されれば、約6億トンの温室効果ガス排出量を防ぐことができます。これは、年間の総排出量の2%に相当する規模です。世界の平均気温上昇を 1.5°C以内に抑えるには、環境再生型農業の成長率を現在の 3 倍にして、2030 年までに世界の農地の40%に達する必要があります。

したがって、WEFは、食品業界全体で共通の温室効果ガス排出量の測定基準を採用することを推奨しています。こうした基準により、農家の慣行栽培からの転換を促し、前向きな変化に対して報酬が受け取りやすくなるはずです。

WEFはまた、二酸化炭素の除去や削減などの環境面の成果を、農業従事者が信頼し安定的に収益化できる仕組みが必要であると提案しています。

環境再生型農業への移行コストを農家と分担するメカニズムに加え、こうした移行を選択した農家を奨励し、報酬を与えるような政府の施策も必要となるでしょう。

結論

歴史的に私たちの食糧生産手法は、農業セクターにおける炭素排出量と資源集約度(利用強度)の両方を上昇させるものでした。世界中の消費者に対して、現在とは異なる食生活を促すことは容易ではありません(例えば、肉、乳製品、砂糖を減らし、果物、野菜、穀物、豆類を増やす、など)。しかし、環境再生型農業の手法を利用すれば、より持続可能な方法で世界中の人々の食を満たせる可能性があります。

スマート灌漑(衛星測位を使用)[1]などのテクノロジーは、環境再生型農業にも役立つ可能性があります。こうしたアプリケーションに取り組む企業、水や肥料の効率的な使用、より質の高い食品[2]といったソリューションを提供する企業、生態系の回復[3]、森林再生などに取り組んでいる企業は、投資家にとって魅力的な投資機会を提供するものと考えられます。

<ご参照>

[1] 水への投資 – 数多くのソリューション – BNPP AM Japan (bnpparibas-am.jp) もご参照ください。
[2] Transforming our food system to be fit for the future (bnpparibas-am.com) もご参照ください(英語)。
[3] Ecosystem restoration: Why should investors be interested? (read or listen) (bnpparibas-am.com) もご参照ください(英語)。

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